※大変申し訳ございませんが、新型コロナウイルス感染症による味覚障害の可能性を考慮し、味覚障害の診察は行っておりません。ご理解・ご協力お願いいたします。
味覚は人間の生活にとって重要な感覚です。
味覚には甘み、塩味、酸味、苦み、うま味の5つの基本味があり、味覚を介して単に味を楽しみ食欲を享受するだけでなく、食物中の有害物質や毒物を識別したりと生命を維持する上でも味覚は積極的な働きをしています。
苦味 +
酸味 ▲
塩味 ×
甘味 ●
成人には、約9000個の味を感じる味蕾があり、それぞれ数個の味細胞からできています。
味細胞は味を生じる物質(味物質)を受け取る細胞で舌の表面に埋め込まれていて、その入り口(味孔)が舌の表面に開いています。
味蕾の数は、ヒトの場合、5~7ヶ月の胎児が最も多く10歳半ばを過ぎると減り始めます。
毎年14万人新たに味覚障害になっており、その中でも若者の急増が目立つと指摘されています。
自然に回復するケースも多いですが、早期発見・早期治療が大切です。
「症状が出現してから半年以上経過した例では、治療をしても改善率が低い」というデータも報告されています。
回復しやすいケースがある一方で、治療が長期間に及んだり、治らなかったりということもあります。
場合によっては耳鼻咽喉科、内科、心療内科などと協力しながら治療していくことも必要になります。
味覚障害は、その程度によりいくつかに分類されており、味を全く感じないものを味覚消失、味覚が全体的に低下するものを味覚減退と呼んでいます。
また特定の味のみがわからないものを解離性味覚障害、口の中でいつも味がするものを自発性異常味覚、本来の味を他の味に感じるものを異味症、全ての味を嫌な味に感じるものを悪味症と言います。
これとは別に味覚の伝達路に基づきその障害を受けた部位による分類もあります。
味蕾の味細胞に対する味物質の接触を障害するものを伝導性障害、味蕾の味細胞の障害が見られるものを感覚性障害、そして味覚神経の経路での障害のあるものを神経性障害と言います。
①たばこを吸う
②ダイエットをしている
③パン食が多い
④加工食品をよく食べる
⑤アルコールをよく飲む
⑥食べ物の味が薄く感じることがある
⑦歯周病や虫歯がある
⑧ストレスが多い
⑨寝不足が続いている
⑩多種類の薬を飲んでいる
味がわからないために食生活が変化して、塩分や糖分の摂りすぎや、食欲が落ちることによる低栄養など二次的な健康被害につながることもあります。
味覚障害のおよそ3割は、体内の微量金属である細胞の若返りに重要な働きをしている亜鉛の不足により起きます。
体内にある亜鉛は、体重の0.02%の量を占めます。体重50kgの人で、わずか10gですが、大切な微量元素です。
1日に必要な摂取量は、成人男性12mg、成人女性9mgです。
血清亜鉛の正常値は70~120μg/dlであり、70μg/dl未満は亜鉛欠乏性味覚障害と考えます。
高野豆腐、湯葉、ホタテ、干しシイタケ、牡蠣(カキ)、小麦胚芽、鰹(カツオ)の塩辛、鮑(アワビ)、パプリカ、からすみ、ビーフジャーキー、豚のスモークレバー、さば節、かたくち鰯、煮干し、かぼちゃの種、パルメザンチーズ、ココア、抹茶、カシューナッツ など
亜鉛欠乏が続くと味覚障害だけでなく、傷の治りが遅い・脱毛・抑うつなどのさまざまな症状を引き起こすこともあります。
特に高齢者でその頻度が高い。
発生機序は薬剤の亜鉛に対するキレート作用が一つの原因とされる。
降圧剤:アデカット、カプトリル、カルスロット、コナン、セタプリル、ディオバン、ノルバスク、ブロプレス、レニベース
抗うつ薬:アナフラニール、アモキサン、トフラニール、トリプタノール、トレドミン、ルジオミール
鼻炎治療薬:アルデシン
抗アレルギー薬:アレジオン
抗真菌剤:イトリゾール、ラミシール
抗パーキンソン薬:エフピー
抗菌薬:クラビット
糖尿病治療薬:グルコバイ
尿酸降下薬:ザイロリック
抗がん剤:シスプラチン、タキソテール、フトラフール、ブリプラチン、ユーエフティ(UFT)
筋弛緩薬:ダントリウム
抗てんかん薬:テグレトール
眠剤:ドラール、ハルシオン
抗血小板薬:パナルジン、プラビックス
高脂血症治療薬:メバロチン
コレステロール降下薬:リピトール
ホルモン剤:リュープリン
統合失調症治療薬:ロドピン
鼓索神経や大椎体神経の障害による味覚障害は中耳炎、中耳手術、顔面神経障害、聴神経腫瘍などで生じる。
舌咽神経障害は球麻痺や扁桃摘出、あるいは喉頭微細手術などで生じる。
脳梗塞や脳腫瘍等の血管性病変、腫瘍性病変、頭部外傷、多発性硬化症などによる味覚障害がこの範疇に入る。
延髄から橋までの病変は同側性の味覚障害が生じる。
血清亜鉛値を含め諸検査が正常であり、誘因や原因が明確にできない味覚障害である。
血清亜鉛値が正常であっても亜鉛投与を行うと亜鉛欠乏性の例と同等の効果がみられる。そのため、突発性味覚障害の主体は潜在性亜鉛欠乏であると推察される。
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