日本ではがんによる死亡者31万人のうち、口腔がんでなくなっている方は約2%に過ぎません。しかし30年前と比べるとその数は2倍以上と著しく増加しています。
口の中は見えるし、感覚も鋭敏です。だから、早期に発見されることも多いのではないかと思われるかもしれません。
しかし実際には、歯肉では6%、頬粘膜では8%、最も発見されやすい舌でも23%程度しか早期に発見されていないのです。
口腔がんの5年生存率は60~80%と言われていますが、初期がんでは90%以上の生存率も報告されています。
多くの口腔がんの患者さんを治せない最大の理由は、口腔がんの7割以上が進行がんの状態で発見されることにあります。
口腔がんは早期に発見し早期に治療すればこわい病気ではありません。
口腔がんの発生の前には、この”がん”になる前の粘膜の変化が何年も続く場合もあり、この状態で発見し適切に治療すれば、口腔がんの発生を防ぐこともできます。
悪性腫瘍の場合、痛みがあまりないものも多いですが、早期がんで潰瘍やびらん(口の粘膜の表面にあり、体の中の筋肉などの組織を守る役割をする上皮が、はがれたり傷ついたりした状態)を作った場合や、進行がんで、大きくなってがんが神経を蝕んだり、痛み物質を出しはじめた場合などに痛みが出ます。
早期のがんは、口内炎や入れ歯の「あたり」のような状態で始まることがあります。
通常の口内炎であれば口腔ステロイド剤の塗り薬や、殺菌などの治療で、数日から2週間程度で治るものが多いので、口内炎が持続する場合には、要注意です。
平成31年2月19日(火)放送
口腔がんは痛みを伴わないことが多く、がんにより表面の上皮が破けたような場合に出血します。
出血によりがんが見つかることも多いので、要注意です。
もちろん、歯槽膿漏による出血もありますのですべてが「がん」ではありません。
がんは「できもの(腫瘍)」ですから、口の中に腫れた部分やしこりがある場合には要注意です。ただ、良性腫瘍(がんではないできもの)や骨の出っ張り、正常の臓器だができものに見えるものなども多くありますので、過剰に心配されることはありません。多くのがんは、表面に潰瘍やびらんがありますが、唾液腺(唾液を作る組織)のがんは、表面がつるんとしていることもあります。
前がん病変(がんになる前の状態の病変)の中に、紅板症というものがあります。この紅板症の約半分が、すでにがんになっていると言われています。紅のように赤く、すこし硬い感じがしたら要注意です。
前がん病変(がんになる前の状態の病変)の中に、白板症というものがあります。この白板症の約6~10%が「がん」になるといわれています。
がんが、頬、舌を動かす神経を蝕んだ場合には、舌を動かしにくいなどの症状が出ます。
がんが、舌や頬などの感覚をつかさどる神経を蝕んだ場合には、舌や頬、その他の部分にしびれや麻痺感などの症状が出ます。
がんが口の中を蝕んだ場合に、首のリンパ節が腫れることがあります。
もちろん、首から上の部分をケガしたり、風邪をひいたり、虫歯や歯周病などの炎症でも首のリンパ節は腫れますが、そのような場合には、傷や風邪が治ったり、炎症が治まったりするとリンパ節の腫れも引きます。
そのような原因もなく、首のリンパ節が腫れた場合には要注意です。
口のがんではありませんが、喉頭がんという「のど」のがんや、食道がんのときにこのような症状が出ますので、要注意です。
入れ歯をしているかたで、がんなどのできものにより、入れ歯が合わなくなり、噛みづらいなどの訴えをされるかたがいます
歯肉がんの場合に、がんが歯を支えている骨を吸収する(溶かす)ことがあります。
グラついた歯の周りの歯肉が汚く盛り上がっていたり、上皮に潰瘍やびらんがあれば要注意です。
同様に抜歯した後、3週間以上たってもなかなか治らない場合も要注意です。
とくに、膿や血の混じった分泌物(鼻水)が出たりする場合。
鼻詰まりや膿は、鼻炎や上顎洞炎(蓄膿症)などの場合にしばしば見られる症状です。その他に、上顎洞の粘膜から、がんが発生することがあります。
ここで重要なのは、片側にそのような症状が出現した場合には、要注意です。
飲酒の習慣のない人に比べ、飲酒する人の危険率は約6倍といわれています。
アルコール濃度の高い、いわゆる「強いお酒」が、口腔がんの危険率を増します。
飲酒による口腔がんの危険性では、特に口腔底がんとの関係が指摘されています。
さらには、「たばこ」と「お酒」の両方の習慣は、吸わない、飲まない人の36倍にもなります。
虫歯でかけた歯、差し歯や入れ歯が合わずにこすれるなどの刺激が、口腔がんの危険率を上げる要因になることが指摘されています。
とくに舌がんで、歯や差し歯による刺激が関係するといわれています。
歯を丁寧に磨かなかったり、いればのお手入れを怠ると、お口の中が汚れて口内炎によるただれ、びらんが起こりやすくなります。
そのため、リスクが高くなってしまいます。
貧血、とくに鉄欠乏製貧血の人では、口の粘膜が萎縮しやすく、口腔がんのリスクが高くなります。
また、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンCなどの欠乏も同様にリスクを高めるといわれています。
口腔がんになった人の約10%に、他の部分にがんがあったり、がんができる可能性があります。
逆にいえば、今までにがんになったことがある人は、口腔がんになる危険性が高いといえます。
口腔がんではとくに、食道や胃などの消化管のがんが同時にできていたり、発生しやすいことが知られています。
壊れた入れ歯、合わない入れ歯、歯のとがった角、壊れたかぶせ物を放っておかずに治療をする
ひと月に1度「こんな症状に要注意!」を参考に口腔がんセルフチェックをしましょう。
早期発見・早期治療なら口腔がんは怖くありません。
気になる症状がある場合は、ぜひお近くの歯科医院(できれば歯科口腔外科を標榜している歯科医院)でご相談ください。
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