鉛筆しんの原料になるグラファイトから作られる「酸化グラフェン」に虫歯の原因菌を破壊する力があるという。虫歯の治療に応用できるかもしれない。
薬物耐性の発生
中国の上海交通大学医学院を含む研究グループが、米国化学会(ACS)が発行する先進材料分野の専門誌ACSアプライド・マテリアルズ&インターフェーシズ2015年3月号で報告した。
口中の特定の細菌が過剰に増殖して起こる歯の病気は大きな問題。
虫歯や歯茎の病気をもたらす細菌を除去するために抗菌薬は有効になり得るものの、薬が効かない細菌が問題になる。
新たなアプローチとして、以前の諸研究で、グラファイトを酸化して水に溶かすと、ほ乳動物の細胞を傷つけずに一部の細菌の増殖を抑制できると判明している。
研究グループは、虫歯や歯茎の病気をもたらす3種類の細菌にこの物質を用いて効果を調べた。
細胞壁と膜を破壊した
その結果、細菌のコロニー数計測やレーザー走査顕微鏡などにより、酸化グラフェンが細菌の増殖を抑制すると確認された。
電子顕微鏡で観察すると、酸化グラフェンが細菌の細胞壁と細胞膜を破壊していた。
「酸化グラフェンは歯の細菌に対して有効で、治療への利用が期待できる」と研究グループは指摘する。
グラフェンにはがんを抑える効果も報告されている(たちの悪い「がん幹細胞」、根絶可能な薬の候補を発見)。
虫歯予防の新しい方法に登場してくるかもしれない。