医療被曝抑制へ統一基準 CT・X線検査など対象

CT検査やX線検査などの放射線検査の関連学会などでつくる団体は18日、検査方法の統一基準を初めてまとめた。日本は「医療被曝(ひばく)大国」と言われており、過剰な被曝を抑えていくことが狙いだ。

 日本は年間のCT検査が約3650万件(2000年)で、人口当たりの件数が世界で最も多い国の一つ。国民1人当たりの医療被曝は先進国平均の約2倍とのデータもある。結論は出ていないが、医療被曝でがんが増えるとする研究者もいる。

 基準を決めたのは、日本医学放射線学会や日本診療放射線技師会など12団体でつくる「医療被ばく研究情報ネットワーク」。東京電力福島第一原発事故で被曝に対する患者の意識が高まったのも背景の一つにあるという。

 対象はCT検査、X線検査、マンモグラフィー(乳房X線撮影)、歯科でのX線撮影、血管造影撮影、陽電子放射断層撮影(PET)など。

 設けられた基準は、例えばCT検査では、体重50~60キロの成人ならば頭部の被曝1350ミリグレイ・センチメートルを目安にすることとした。1~5歳の小児では頭部が660ミリ、胸部は300ミリとした。

 現状は、同じ検査でも病院によって線量は数倍の違いがある。線量が高い方が鮮明な画像を得られることも一因。基準は、学会などが行った実態調査の線量を低い順に並べ、原則として4分の3に位置する値とした。国際機関が推奨する方法で、実態調査と基準の見直しを繰り返し、全体の線量を段階的に減らすことを目指す。

 ネットワークによると、日本の実態をふまえた今回の基準は、頭部のCT検査では成人が欧州より300ミリ以上高い。1~5歳の小児もドイツやタイより約100ミリ多い。

 医学放射線学会放射線防護委員会長の石口恒男・愛知医科大教授は「今回の基準は出発点。基準よりも高い病院には、診断に支障が無い限り基準まで下げてもらいたい」と話す。

 ネットワーク代表の米倉義晴・放射線医学総合研究所理事長は「今後は基準を使い、各病院の線量を必要最小限にしていくだけでなく、関連学会の指針などで疾病の種類ごとに被曝を伴う検査が本当に必要かどうかも精査してほしい。日本の医療被曝対策を欧米並みに進めたい」と語る。

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新しく決まった放射線検査の基準例

【CT検査 成人】(体重50~60キロ)(臓器の被曝線量目安)

・頭部 1350ミリグレイ・センチメートル

・胸部 550ミリグレイ・センチメートル

【CT検査 小児】

・(1歳未満)頭部 500ミリグレイ・センチメートル

・(1~5歳)頭部 660ミリグレイ・センチメートル

・(6~10歳)頭部 850ミリグレイ・センチメートル

【X線検査】(皮膚表面の線量)

・胸部正面 0.3ミリグレイ

・太もも 2・0ミリグレイ

・足関節 0.2ミリグレイ

・乳幼児全般 0.2ミリグレイ

【マンモグラフィー】(乳腺の線量)

2.4ミリグレイ

(医療被ばく研究情報ネットワークによる。ミリグレイは体重1キロに吸収された放射線エネルギー量。CTは患者を移動させながら撮影するため、撮影範囲の長さを掛けたミリグレイ・センチメートルという単位で表される指標が用いられる)