ハンドドライヤーの方がより手の細菌を拡散させる可能性がある

トイレでの細菌拡散を防ぐのに、より良いのは紙タオルとハンドドライヤーのどちらであろうか? 紙タオル製造業者の団体によって資金提供された新しい研究によると、タオルの方が細菌の拡散性が低かったことが示されている。

以前の試験の結果はまちまちであった。いくつかの結果ではハンドドライヤーがより細菌を広め、他はタオルと同等に安全であると示している。Mayo Clinic Proceedingsで2012年に公表された過去の試験のレビューでは、医療の場では、少なくとも、「紙タオルが推奨されるべき」と示されている。

フランスで先週開催された、新しい研究のスポンサーであるEuropean Tissue Symposiumの集会で、その研究ではジェットハンドドライヤーは紙タオルの27倍、温風乾燥機の4倍の細菌を拡散させたと研究者らは述べた。

 筆頭著者のMark Wilcox氏と同僚らは、手袋をはめたボランティアに、"優しい"細菌の一種、乳酸菌を含んだヨーグルトの中に手を浸してもらい、その後、ジェットハンドドライヤー、温風乾燥機、そして紙タオルを使って手を乾かしてもらった。

 試験は6週にわたり60回行われ、それぞれの方法について20回収集した。1メートル離れたところから、コロニー形成単位を使用し測定した平均空中浮遊細菌数は、手袋をはめた手がジェットハンドドライヤーで乾かされた場合89.5、温風乾燥機では18.7、紙タオルでは2.2であった。

 細菌がまん延する可能性を視覚的に評価するめ、参加者に手袋をはめた手を黒い塗料に浸してもらい、白い使い捨てスーツを前後逆に着てフードで顔を覆ってもらった。可視の斑点は、ジェットハンドドライヤーを使用して手を乾かした場合230、温風乾燥機で130、紙タオルを使用した場合は0であった。

イギリス、Leeds Teaching Hospitalの微生物学部門コンサルタント/長であるWilcox氏は、手を完全に乾かすことが人々や表面への細菌拡散を避けるのに重要なことであると、Reuters Healthに電子メールで指摘した。

 「ジェットハンドドライヤーを使う時に自分の顔に水滴が打ち付けていると思ってしまう、当惑するような観察結果を得た」と、Wilcox氏は研究実施における関心を述べた。「感染対策医師にとって基本方針となるのは、細菌をまん延させる危険を減らすことだ。」 

 彼と共著者らは、誰かがハンドドライヤーは紙タオルよりも多くの病原菌を広めると思い込む前に、さらに研究がなされる必要があると述べる。

マサチューセッツ州East LongmeadowにあるExcel Dryer, Inc.のマーケティング部長William Gagnon氏はReuters Healthに対し電子メールで、細菌について異なる乾燥方法による違いを示さなかった試験と、未使用の再生紙上の細菌を示した他の試験を挙げた。

テキサス州ラウンドロックにあるAntimicrobial Test Laboratoriesの社長兼CEOであり微生物学者であるBenjamin Tanner氏は、手袋をはめた手(彼は非現実的と言う)を使っており、塗料の斑点と細菌数の多さ、そして実際の健康上のリスクを示せていないと、この新しい研究を批判した。

 「よくできた試験なら、手にある疾患を引き起こす有機体のレベルを測定し(これは実施されている可能性がある)、その後、乾燥の結果として吹き飛ばされたそれら細菌の数を測定するのかもしれない」と、Tanner氏は電子メールでReuters Healthに伝えた。Wilcox氏は、この試験は「よく洗えていない手を表すために、多数の細菌で意図的に汚染させた手であり、(我々は)公表の中でこの決定の妥当性を証明している。」と返答している。

John Segreti医師はReuters Healthに対し電話で、この試験は興味深いもので良く出来ていると述べた。Segreti氏は、「彼らがしようとしていたことは、手をよく洗わない人の真似で、現実の分析を目的としていない。」と述べた。しかし、この研究に参加しなかったSegreti氏はドライヤーからの細菌がそれほど健康上のリスクであると考えていない。

 「彼らの結論では多くの不確実性が存在しており、、、そしてそれに留意する必要があると考える」と、シカゴ、Rush University Medical Centerの感染病専門医で病院疫学者のSegreti氏は言及した。

 「人の皮膚の上にある病原体のほとんどは空気染経路でではなく、直接(接触)により広まる」のだと、彼は重要そうに述べた。

 「空気中に飛び散ったものよりも、乾燥後に手の上に残ったものの方がより重要だ」と彼は言う。

Segreti氏はまた、病院は患者フロアでは、乾燥機ではなくアルコールジェルやフォームを使用する傾向にあるとも述べた。

 「確かに、(それらは)あちらこちらの公衆トイレにあり、地域の中での感染にどのように変わるのかは違う問題だ。こういったことまで遡った感染をまだ知らない」

 先週のフランスでの発表前に、本試験は8月のJournal of Hospital Infectionにてオンライン上で公開された。