歯肉炎によって市中肺炎リスクが増大するかもしれない

中等度から重度の歯周炎患者は、歯肉が健康な人々と比較し、市中肺炎(CAP)のリスクが高いことを研究結果から示されています。

「十分に立証された研究から、主として歯周感染を有し、口腔内の衛生状態が不良な人々の口腔は呼吸器疾患の感染源とみなすことができます。したがって、肺疾患への進展における潜在的危険因子であることが示唆されている」とEduardo Saba-Chujfi(Sao Leopoldo Mandic Institute and Research Center、ブラジル・サンパウロ)らは説明しています。

これらのことからSaba-Chujfiは、CAPによる入院患者70人および他の疾患による入院患者(対照群)70人を対象とし、歯周の細菌感染のCAPリスクへの寄与について検討しました。European Journal of Clinical Microbiology and Infectious Diseasesでの報告によれば、Saba-Chujfiらは全患者を対象として、歯周ポケットの深さ(pocket probing depth, PPD)、歯周組織の付着の喪失(clinical attachment loss, CAL)、プロービング時の出血(bleeding on probing, BOP)および歯垢の有無を評価するため、詳細な歯周検査を実施しました。
CALおよびBOPの数値はCAP群で対照群よりも有意に高く、それぞれ3.16mmと1.99mm、0.33%と0.25%でした。慢性歯周炎の割合もCAP群で対照群よりも高く、61.4%と41.4%でした。
しかし、歯垢の有無はCAP群と対照群のいずれも高く、それぞれ97.1%と98.6%であり、またPPDのスコアは両群間に有意な差は認められませんでした。

年齢、民族、性別および喫煙状況を調整した追加解析から、中等度から重度の慢性歯周炎が存在すると、健康な歯肉を有する場合と比較し、CAPのリスクが4.4倍と有意に増大することが示されました。

「CAPは公衆衛生上の重要な問題であり、北米および南米の国民における高い罹病率および死亡率の原因となっている」とSaba-Chujfiらは述べています。
「介護施設入所者の適切な口腔衛生は、肺炎罹患率を効果的に低下させ、これらの高リスク集団に有意なベネフィットをもたらし、肺炎による罹病率および死亡率を低下させる可能性がある」とSaba-Chujfiらは結論付けています。